新幹線・特急列車の格安チケット予約ガイド
スーパーはくとの速さと乗り心地を決めているのは、HOT7000系という車両です。振り子の原理から座席の選び方までを、乗る前に知っておきたい順番で整理します。
スーパーはくとの速さと乗り心地を決めているのは、HOT7000系という車両です。振り子の原理から座席の選び方までを、乗る前に知っておきたい順番で整理します。
スーパーはくとに使われるHOT7000系は、気動車(ディーゼルカー)です。エンジンを積み、軽油を燃やして走ります。京都・大阪といった大都市を走る特急としては、やや珍しい存在です。
理由は路線の電化状況にあります。スーパーはくとが走る区間のうち、東海道本線・山陽本線・山陰本線の一部は電化されていますが、智頭急行智頭線と因美線は電化されていません。電車であれば架線のない区間は走れませんから、全区間を直通するには気動車である必要があります。
「ディーゼルだから遅いのでは」と思われるかもしれませんが、そうではありません。HOT7000系は1両あたり複数のエンジンを搭載し、電車特急に匹敵する加速性能と最高速度を備えています。山陽本線では新快速や貨物列車と同じ線路を高速で走り、智頭線では急曲線を車体を傾けながら駆け抜けます。
そして1994年のデビュー翌年、HOT7000系は鉄道友の会のブルーリボン賞を受賞しました。これは鉄道愛好者の投票などにより、その年に登場した優秀な車両に贈られる賞です。第三セクター鉄道の車両が受賞したことは、この車両の完成度の高さを物語っています。
HOT7000系を語るうえで避けて通れないのが「振り子式」です。
なぜ振り子が必要なのか。鉄道車両がカーブを曲がるとき、乗客には外側に投げ出される力(遠心力)がかかります。速度を上げるほどこの力は大きくなり、ある限度を超えると乗り心地が耐えられなくなります。だからカーブでは減速する必要がある。カーブの多い山岳路線が遅くなるのは、このためです。
振り子式の発想は単純です。車体をカーブの内側に傾ければ、乗客が感じる横方向の力を打ち消せる。オートバイがカーブで内側に倒れ込むのと同じ原理です。傾けた分だけ速度を上げても、乗客は横に振られにくくなります。
「自然振り子」は、遠心力そのものを使って車体を傾ける方式です。車体を台車の上に、円弧状のレールやコロを介して載せておくと、カーブに入って遠心力が働いた瞬間に車体が自然に内側へ傾きます。装置が単純で軽いという利点がありますが、欠点もありました。傾き始めるのがカーブに入った後になるため反応が遅く、乗客が「振られてから、遅れて傾く」という不快な挙動が生じやすかったのです。初期の振り子車両で「酔いやすい」と言われたのは、主にこの遅れが原因でした。
「制御付き自然振り子」は、その欠点を解決した方式です。あらかじめ路線のカーブの位置・半径・カントを車両側のデータとして持っておき、地上子などから得た位置情報と走行距離で「今どこを走っているか」を把握します。そしてカーブに入る直前から、能動的に車体を傾け始めるのです。カーブの入口ではすでに適切な角度に傾いているため、遅れによる不快感が大幅に減ります。
HOT7000系はこの制御付き自然振り子を採用しており、最大でおよそ5度の傾斜が得られます。数字としては小さく見えますが、これによってカーブでの通過速度を大きく引き上げることができ、智頭線区間の速達性を支えています。
乗っていると、智頭線に入ってから車体がゆっくり左右に傾くのがはっきり分かります。窓の外の水平線が斜めに見え、次の瞬間には反対側に傾く。この感覚こそが、スーパーはくとに乗る醍醐味のひとつです。
制御付き自然振り子は大きく改善されたとはいえ、傾きそのものが無くなるわけではありません。乗り物酔いしやすい体質の人は、次の点を意識すると負担が軽くなります。
なお、酔いを強く懸念する場合は、智頭線を経由しない「はまかぜ」など別ルートの選択も検討の余地があります。ただし所要時間は長くなります。
HOT7000系は数両で1編成を組み、需要に応じて増結・減車が行われます。編成の両数は列車や時期によって変わるため、「必ず○両」と決めつけないほうがよいでしょう。
座席のクラスは大きく3つです。
グリーン車。編成の端の車両に、半室(車両の一部)として設けられています。座席は2列+1列の3列配置で、普通車より横幅と前後の間隔が広く取られています。運転席直後に位置する場合は、前面の展望が楽しめる位置関係になることもあります。料金は乗車券・特急料金に加えてグリーン料金が必要です。3時間を超える乗車になる京都発着では、体の負担を減らす投資として検討する価値があります。
普通車指定席。編成の大半を占めます。2列+2列の4列配置で、リクライニングとテーブルを備えます。確実に座りたい場合、繁忙期に乗る場合、大きな荷物がある場合は、指定席一択です。
普通車自由席。指定席特急券より安い自由席特急券で乗れます。空いている時期・時間帯であれば快適に座れますが、繁忙期や通勤時間帯は立ち席になる可能性があります。自由席の設定車両数は列車によって異なるため、乗車前の確認が欠かせません。自由席の実務的な立ち回りについては、スーパーはくと 自由席の乗り方と予約方法完全ガイドも参考にしてください。
「窓側のA席とD席、どちらを取るべきか」は、多くの人が悩むポイントです。区間ごとに見どころを整理します。
京都〜姫路。都市部の車窓です。淀川、大阪の高層ビル群、神戸の街並み。姫路では、進行方向右手(下り列車)に姫路城が見えることがあります。城を狙うなら、下りは山側(北側)の席が有利です。
上郡〜智頭。この特集の主役区間です。トンネルと谷が交互に現れ、高い橋梁から見下ろす渓谷の景色が続きます。左右どちらでも見どころはありますが、車体が傾く感覚を強く味わいたいなら窓側であることが重要です。通路側では傾きの体感がやや薄まります。
智頭〜鳥取。千代川に沿って下る区間です。川が見える側の席は、水面と山肌のコントラストが美しく、特に新緑と紅葉の時期は見応えがあります。
鳥取〜倉吉。山陰本線に入り、日本海が近づきます。海が見えるのは進行方向右手(下り列車)側です。ただし、常に海が見えるわけではなく、区間は限られます。
まとめると、総合的には「窓側であればどちらでもよい」というのが実際のところです。強いてこだわるなら、姫路城と日本海を優先して下り列車で海側/城側を選ぶか、渓谷美を優先するか、という判断になります。
電源コンセント。リニューアルにより、座席で電源を利用できるよう整備が進んでいます。ただし全席・全車両で同じ条件とは限らないため、業務利用で確実に電源が必要な場合は、モバイルバッテリーを併用しておくと安心です。
インターネット接続。長いトンネルが連続する智頭線区間では、携帯電話の電波が途切れることがあります。オンライン会議や大容量の通信を前提とした作業は、この区間では想定しないほうが現実的です。逆に言えば、通信が切れる時間を集中作業や読書に充てられるのがこの列車の使い方です。
トイレ・洗面。編成内に設けられています。多目的設備の有無や位置は編成によって異なるため、必要な場合は事前に問い合わせるのが確実です。
荷物置き場。座席上部の荷棚に加え、車両の端に大型荷物用のスペースが設けられている場合があります。スーツケースを持ち込む場合は、乗降口に近い座席(各車両の端の席)を選ぶと移動が楽です。
車内販売・自動販売機。近年、多くの在来線特急で車内販売の取りやめが進んでいます。飲み物や食べ物は乗車前に確保しておくのが基本と考えてください。京都駅・新大阪駅・大阪駅・姫路駅にはいずれも駅弁や売店が充実しています。鳥取方面へ向かう列車で駅弁を開くのは、この旅の楽しみのひとつです。
ベビーカー・自転車・ペット。ベビーカーは折りたたんで荷物スペースを利用するのが基本です。自転車は輪行袋に収納すれば持ち込み可能ですが、大型荷物として扱われるためスペースの確保に注意が必要です。ペットは、規定のケースに収める、サイズ・重量の条件を満たすなどの条件下で手回り品として持ち込めます。詳細な条件は各社の規則によるため、公式情報での確認が必要です。
大阪から鳥取まで約2時間30分、京都からなら3時間を超えます。この時間の使い方を、あらかじめ設計しておくと快適さが変わります。
仕事をするなら、上郡までの山陽本線区間が最適です。線形が良く揺れが少なく、電波も安定しています。上郡から先はトンネルと傾斜で作業効率が落ちるため、この区間は資料を読む、考えをまとめるといった通信不要の作業に切り替えます。
景色を楽しむなら、逆に上郡以降が本番です。上郡までは仮眠や食事に充て、智頭線に入ってから窓の外に集中する、という組み立てが合理的です。
子ども連れなら、乗車前に駅で軽食と飲み物を確保し、通信が切れる区間に備えてオフラインで遊べるものを用意しておきます。振り子の傾きは子どもにとって新鮮な体験で、「電車が傾くよ」と教えておくと退屈しにくくなります。
次章では、いよいよ実務です。「いつから」「どこで」「どうやって」チケットを取るのかを、順を追って解説します。
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