空港アクセス600円引きが示す、深夜早朝便の売り方

空港アクセス600円引きが示す、深夜早朝便の売り方

ニュースの概要

京成電鉄は、Jetstar Japanの就航15周年にあわせた連携キャンペーンを11月1日から12月18日まで実施している。対象は成田空港を午後10時から翌朝7時59分までに発着する便の利用者である。京成上野・日暮里から空港第2ビルまでのスカイライナー乗車券を、大人700円、子ども350円で買える。通常は大人1,300円、子ども650円なので、大人は600円、約46%の値引きになる。購入時には対象便の旅程表などの提示が必要となる。LCCの安さに、空港アクセスの安さを重ねる企画である。

引用元: Jetstar深夜・早朝便利用者向け、京成スカイライナーを700円に割引(TRAICY Global)

分析・見解

約46%引きが狙うのは、空いている座席と時間帯

スカイライナーは速さを売る特急である。成田空港と都心を最短約40分で結ぶ。ただし深夜や早朝は、通勤時間帯ほど席が埋まらない。空席のまま走らせても、運行コストはほとんど変わらない。そこで空いている時間帯の席を、割引で埋めにいくのが今回の発想だと読める。

しかも対象は、深夜早朝便の利用者だけである。昼間の通常客まで値引きに巻き込まない設計になっている。割引の対象を絞れば、減収を最小限に抑えながら需要だけを足せる。航空会社の運賃設計でいう「需要の谷を埋める値付け」を、鉄道が借りた形である。

深夜早朝便の利用者が抱える、移動の不安を解く

LCCの深夜早朝便は、運賃が安い。一方で、利用者には別の悩みがある。夜遅く着くと終電が気になる。朝早く出るなら始発に間に合うかが不安になる。バスや車を選べば安いが、渋滞や乗り換えの手間が残る。

鉄道の特急が安くなれば、この不安は和らぐ。スカイライナーは定時性が高く、到着時刻を読みやすい。航空券が数千円の旅で、アクセスに1,300円かかるのは重い。それが700円になれば、心理的な負担はかなり減る。航空券とアクセス費用を合わせた総額で比べる人にとっては、決め手になり得る。

他社の空港アクセス施策と比べて見えること

空港アクセスの割引は、他の地域にもある。たとえば海外では、空港鉄道が航空券とのセット販売で集客する例が多い。日本でも、訪日客向けの割引乗車券は各社が出している。ただし今回のように、特定の航空会社の就航記念と結びつけ、時間帯まで絞る例は珍しい。

航空会社にとっても利点がある。LCCは運賃の安さが最大の武器である。そこへ「アクセスも安い」と言えれば、競合との差を作りやすい。就航15周年という節目の話題性も使える。鉄道と航空が互いの顧客を送り合う、いわば相互送客の枠組みである。

一時的な割引から定着する仕組みになるか

今回は12月18日までの限定である。大事なのは、この期間に何が分かるかだ。対象便の利用者のうち、どれだけが割引券を買ったのか。普段は高速バスを使う層が、鉄道へ流れたのか。この数字が良ければ、期間の延長や、他の航空会社への拡大もあり得る。

ただし課題もある。旅程表の提示が必要なため、購入の手間は増える。窓口での確認作業が、混雑の原因になる恐れもある。事前にオンラインで買える仕組みに進めば、使い勝手はさらに上がるだろう。

ビジネスへの影響

鉄道事業者が学べる、時間帯を絞った値付けの考え方

今回の事例は、値下げを全員に広げないことの大切さを示している。空いている時間帯と、需要が伸びそうな客層を組み合わせて絞る。そうすれば、既存の収入を削らずに新しい客を増やせる。観光列車や通勤特急を持つ事業者にも応用できる。まずは、乗車率が低い時間帯のデータを洗い出すことから始めるとよい。

旅行会社や宿泊施設が、今すぐ使える活用法

深夜早朝便を使う客は、前後の宿泊に悩みやすい。到着が深夜なら、空港近くや日暮里周辺の宿が選ばれる。宿泊施設は、アクセス割引と組み合わせた宿泊プランを作れる。たとえば「早朝便の前泊プラン」である。旅行会社も、LCCの航空券と特急券を一括で案内すれば、問い合わせが減り、成約も増える。

インバウンド向けの案内にも、この割引は使える。外国人旅行者は、空港から都心までの料金に敏感である。多言語の案内に割引情報を載せるだけで、選ばれやすさは変わる。

連携企画を成功させるための、手続きの簡素化

提携企画は、手続きが重いと使われない。旅程表の提示は不正利用を防ぐ一方、利用者には手間である。QRコードや予約番号の入力で済ませる仕組みが望ましい。企業が似た連携を考えるなら、本人確認の手順を先に設計しておくべきだ。期間中の購入数や利用時間帯を記録しておけば、次の企画の根拠にもなる。

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